=== 岸田秀「心理学無用論」について ===

=== 岸田秀「心理学無用論」について ===

最後に、「学歴をうるさく言うのはレベルが低い」 「学歴を問わず主張そのものの価値を見よ」などのコメントに対してあらかじめ反論しておきます。


「ものぐさ精神分析」の中には、今でも優れていると思える小論文もいくつかあります。

しかし、岸田の学歴を知ると全く違って読めてくるものも あります。これがもっとも顕著な例が「心理学無用論」です。

(ぜひ目を通してください。文庫本の中です。)

20年前に、これを読んだ時には、なんて乱暴で、また 心理学を真面目に研究している日本の学者に対して 無礼なこと言うんだろう、と感じましたが。
まあこの岸田さんも、フランスまで行って苦労して博士号 取ってきた人だし、学会では地味な論文とか発表してるんだろうし、日本の心理学のことを真剣に心配して、また 「自分のやっていることに疑問を感じている」というような 意味のことを少々ふざけたように面白く書いているんだろう、と、こう思いました。

しかし、岸田の学歴を知った今よむとと全く違うふうに読めます。ーー

成績の悪い高校生がいて、なぜか東大にあこがれてたとします。6年間も浪人して東大を受けたが、とうとう挫折して和光大学に入ったと。その男が後に「放校になった落第生が仕返しに学校に火をつける」みたいな感じに「東大無用論」を書きました。

そんな文章だれが読みますか?  そんな文章を「ユリイカ」が収録することがありますか?  岸田がこんな文章を人に読ませることができたのは、ひとえに学歴詐欺によるものなのです。

(岸田は新聞に「学校教育“幻想”の呪縛から自由になることをすすめる」と「学歴無用論」も書いてます。http://home.owari.ne.jp/~fukuzawa/nikki02-7.htm

「負け犬の遠吠え」という言い回しは30年聞いてましたが、ぴったりの実例にはじめて出会いました。

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岸田: 「心理学は、(。。。)科学ではなく、形而上学である。」

間違い。単なる心理学に対する中傷。形而上学の部分が現象学とかDennet、Chalmersのやってるものになった。科学の部分を心理学と呼ぶ。

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岸田: 「ご存じのように、学会誌というものには三流、四流の論文しかのっていないものである。」

間違い。単なる心理学の論文を書いている学者に対する中傷。

岸田が学会にひとつも入らなかった一番の理由は、学校・学問の世界で徹底的に落ちこぼれて、もう凝りていたからだと思います。 この「心理学無用論」を書いた時点で、終生、論文を書く気も学問的なことをする気も、無かったわけです。

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岸田: 「日本の心理学者では、世界的水準に達した者はかつて一人もいない。日本で生まれた理論も心理テストも一つもない」(中略)(そんなことは)「絶対に起こり得ないことなのだ。」

無知な人間って大胆なこと言いますね。アメリカの関連分野の学者で森田療法を知らぬ者は一人もいません。

博士課程の勉強(Qualifying Exam)は、その分野を広く知る、ということも目標ですが、落第生の岸田は「博士号ダブル挫折」の学歴が示す通り、心理学をあまり広く知らぬのです。

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岸田: 「心理学は人間の心の原理を研究する学問であると、素人は思っている。ところがこれがこれが大違いである。」 「ネズミが右へ走ったとか左へ走ったとかいう実験をやっている。」

たしかに、認知心理学と称して、鳥の鳴き声(birdsong)録音したり、鳥の脳の解剖したりしている人がいますね。

しかし、ごく初期でも、人間の脳に電極つっこんで電気流したPenroseとか 
A.Stanford大学の有名な「いかに善良・従順な人間がナチズムの手先となったか」の研究
B.Gazzaniga の split−brain research
REM睡眠の研究 ・・・などがあります。 (最近AとBを題材にした日本語の小説よみました。)

脳内視覚 Localizationの研究なども進んで、立花隆「脳を究める」の中にあるような、一般人も面白がるような成果が出ています。

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すでに教養もあり、心理学についての知識がある人が「ものぐさ精神分析」読んでも、「奇抜なこと言ってて少し面白いな」くらいの感想しかない(なかった)のかもしれませんが、私くらいの年齢で読んだ人間にはすごいインパクト受けた人も多いと思います。

小谷野も(岸田が)“「ものぐさ精神分析」で一世を風靡した。”と書いています。「一世を風靡」なんて美空ひばりじゃあるまいし、彼がこう書くのは、彼自身が、すごいインパクト受けたからだと思います。伊丹がショック受けたのは、特別な事情があったからみたいです。

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日本では、本が当たっていったん「エライ先生」になると、内容のない対談ものを出し続けるという構図が顕著です。(マレーシア、シンガポールなど小国ではこうかもしれませんが。)

これって、すごく不公平で、岸田などにこういうことさせるのは、一国の知的資源の無駄使いだと思うのですが。

アメリカでは岸田などのように、こういうこと してる人はいないと思います。(対談もの、というジャンルがないこともあるが)


END of muyo